「子どもがわからないと言ってきたらどうするべきか」
中学受験で、お父さんお母さんからよく相談を受けます。
以前、宿題への取り組み方について書いていきました。
今回は、学習内容についてはどうするべきかについて書いていこうと思います。
今回は3ページ構成になっています。
1ページ:親が教えることで、親子の関係性に影響を与える
2ページ:親が教えることで、子どもが理解できなくなってしまう
3ページ:それでも教えたいと思う方へ
是非、最後までお読みください。
個人的見解
まず、私の個人的な意見は「勉強内容についてはノータッチ」です。
取り組み方について、支えてあげることはよいと思います。
まだまだ未熟な小学生が立ち向かう中学受験では、大人のフォローが必要なこともあるでしょう。
ただ、学習内容となると話は別になります。なぜ教えないほうが良いのか。
その理由は主に
①親子の関係が悪くなる可能性がある
②親が教えることで、逆に子どもが混乱する
の2つがあります。
親と子の関係が悪くなる可能性がある
これが親が子どもに教えることで一番のデメリットではないかと思います。
学校や塾の先生と親が教えることの一番の違いは、教える対象が身内であるかないかでしょう。
これは、子どもを客観的に見ることができるかにつながってきます。
身内ではない先生の場合、その子を客観的に見ることができます。
その子の強みと弱点などを考えながら、伸ばすためにいい方法を考えることができるのです。
一方これが自分の子供であるとどうでしょうか。客観的にみることがとても難しくなってしまいます。
その結果、弱点しか見えなくなってしまうことが多いのです。
時には、弱点ではないものが弱点と思ってしまう場合もあります。
計算ミスをしたときの対処方法を例に見ていきましょう。
一問の計算ミスについて
計算で重要なことはスピードと精度です。そのため、計算ミスを減らすのはとても大切です。
ですが、10問中1問をミスする子と100問中1問ミスする子では全然意味が違いますよね。
客観的に見ていると一問のミスがあったとき、「今回は計算ミスを起こしてしまったけど、普段はミスが少ないから課題を出したりする必要がない」とか「普段から計算ミスが多いから何か課題を出して計算力を向上させよう」とかいくつかの選択肢から選ぶことができます。
しかし、客観的に見ることができない場合はどうでしょう。
一問のミスだけをそのまま見てしまいます。
そして、「この子は計算ミスをしてしまう子だから、計算力アップのための取り組みをさせなくちゃ!」と思ってしまいます。
10問に1問のミスなら有効かもしれません。ですが、100問に1問のミスをするような子の場合は、本当に必要でしょうか。
ほかの項目が完璧であることを前提にすれば、100問に1問しかミスをしない子に課題を出すことは有意義かもしれません。
ただ、講師の立場から見ると、100問に1問の計算ミスをなくすことよりも、他に勉強してほしい事柄は山ほどあります。
受験までのスケジュールを逆算したとき、今最もやるべき勉強は何かということを考え、実践する必要があります。
計算ミスをなくすための課題は、今のその子にとって「必要ではない課題」なことがあるのです。
こういった冷静な判断を下すためには、客観的な視点が必要不可欠といえるでしょう。
親子の関係性
必要ではない課題を与え続けるとどうなるでしょうか。
当たり前ですが、勉強漬けの毎日を送ることになります。
ひどい場合は、毎日勉強しても終わらないような量を出していることさえあるのです。
さて、そんな日々を送っている子どもがお父さんやお母さんのことをどう思うでしょうか。
「大変なことをさせられている」ということしか思わないでしょう。
一方、そういう日々を送らせてしまっているお父さんお母さんは子どもにどう思っているか。
個人的な経験則でいえば、面談などで「本当にダメな子」と言っている方が多い印象です。
おそらく「これだけサポートしているのに全然伸びない」と考えているのでしょう。
受験結果が納得のいくものであればまだいいのですが、結果が出なかったときは本当に悲惨です。
一度だけ、そのような家族を見たことがあります。
保護者の方は、模試や過去問の結果が出るたびに、「〇〇をやらせた方がいいんでしょうか?」というような相談の電話がありました。
点数だけを見ているのではなく、答案の内容まで細かく見ているのが伝わりました。
一方子どもは基本的に真面目な子です。ただ、宿題に取り組めていないこともありました。
理由を聞いてみると「他の勉強をしていた」と言うのです。もう少し詳しく聞いてみると「親にやるようにと言われたことをやっていたため、宿題ができなかった」ということでした。
そんな子の受験結果は、満足いく結果ではありませんでした。
受験直後にご家庭と話す機会があったのですが、子どもは「もう勉強なんかしないし、親の言うことなんか絶対に聞かない!」と言っていました。
お母さんは「もうあの子に期待するのはやめます」と冷徹に言っていました。
少し極端な例かもしれませんが、こうなる可能性を秘めているのです。
折角「中学受験」という大きな壁を越えていくのです。
どうせなら「受験をしたからこそ親子の仲がより一層深まった!」というような受験をしてほしいと思います。
そうなるためには、勉強内容に直接口を出なさいほうではないかと思うのです。