ここからは、中学受験における宿題と難度、そして実際に大人ができることは何なのかについて書いていこうと思います。
関わり方について具体的な例まで書いてみましたので、ぜひ参考にしていただければと思います。
このページは3ページ目です。他のページ目を見ていない方は、ぜひ1ページ目からお読みください。
1ページ:中学受験の生活と子どもにとっての宿題
2ページ:宿題を「やるべきもの」にする大人の関わり方
3ページ:実際に宿題をやらせるために大人ができること
量と難易度 ~中学受験における宿題~
中学受験のカリキュラムは、学校のカリキュラムとは比べ物にならないほど難しくなっています。
それなのにスピードは非常に早くなっています。
そのため、定着のために必要な演習の時間を授業内で十分にとることはできません。
ではどうやって身につけるのかというと、宿題を使うのです。
「やり方は塾(授業)で伝えた。あとは、宿題で練習してこい。」というような出し方が塾での、中学受験での宿題です。
しかも、塾は定着させるために必要な量を出してきます。
まだ完璧に定着していないものを、定着のために必要な量やらされるのです。
なかなかに厳しいことを求めていると思います。
※これについて、塾の先生を責められることではありません。
必要な知識や学習量を考えると仕方のない部分でもあるでしょう。
そのため、「やらない」のではなく、「できない」に近いものがあるかもしれません。
宿題をできるようにするには
そんな宿題をできるようにするには、原因と改善策を考える必要があります。
原因は様々なため、一概にこれが原因だということはできません。
ただ、考えるうえでのポイントがあると考えています。それが、
①子どもと一緒に考えること
②一度で正解を出そうとしないこと
の2つです。
どういうことか、簡単に見ていきましょう。
子どもと一緒に考える
原因や改善策をを考えるさいは、子どもだけでも、親だけでもなく、親と子どもが一緒に考えてほしいと思います。
なぜなら、その改善策を実行するのは子どもだからです。
それなのに、大人だけで考えるとどうなるでしょうか。
子どもが実行できないこと、正確には「大人にはできることだが、子どもがやるには大変なこと」になることがあります。
また、現実的にできるものであったとしても、その改善策が実行できなかったときの理由を大人に求めてしまいます。
この記事を読まれているなかにも、親に「勉強しなさい!」と言われて「今からやろうと思っていたのに!」と反発したことはありませんか?
これと同じように、「親が考えたことだからできない、やらない」と反発してしまいます(親に直接言わなくても思っていることはよくあります)。
大人が考えたほうが、有効なものが思いつくとは思いますが、やめておきましょう。
一方、子どもだけというのもお勧めしません。
なぜなら、あまり効果がないことがほとんどなのです。
考えたものを聞いてみると、的外れだったり、改善策として成立していなかったりということがほとんどです。
これは、子どもをバカにしたりしているのではなく、単純な経験の差です。
経験の量が少ないため、効果的な改善策など思いつけないのです。
そのため、子どもに1人で考えさせるのは得策ではないといえます。
大人だけでは子どもが反発するし、子どもだけではあまりいい策が思いつかない。
だからこそ、子どもと大人が一緒に考える時間を作ってほしいのです。
子どもがよい改善策を考えられるよう、大人が誘導していくのがベストなのです。
一度で正解を出さない
とは言え、適切な方法に誘導させるなんて難しそうですよね。
これを少しでも簡単にするのが、「一度で正解を出さない」ということです。
少しずつ改善策に近づけていけばいいと考えてください。
なぜなら、子どもに改善策を実行してもらう必要があるからです。
先ほども少し書きましたが、自分で考えたことではないと「親が勝手に決めただけ」というような形でやらないことが多々あります。
我々からしたら「一緒に決めたことだろう」と思っても、子どもの感じ方は全然違います。
だからこそ、形式的にでも子どもが自分で考えたことにする必要があります。
しかし、子どもが考えても最適解はまず出てきません(というより、大人が考えても一度で最適解を出せることはまれでしょう)。
そこで、少しずつ最適解に近づけていこうと考えましょう。
改善できなかった、改善しきれなかった、そもそも改善策を実行できなかった。
では次はどうすればよいのか、また同じように考えていけばよいのです。
いわゆるPDCAサイクルですね。
その繰り返しの中で、少しずついい行動に変えていきましょう。
ただ、「すぐに直さないといけないだろう」と考える方もいるでしょう。
特に宿題をしていないということであれば、その分定着が遅れてしまうのではないかと不安に思う方もいるかもしれません。
ですが、実は塾の学習内容は、その週ごとに全部身につけなくてはいけないということではないのです。
例えば、6年生の夏期講習には5年生のテキストを一からやり直しをさせるというようなことがあったりします。
身につけても忘れてしまった、そもそも身につけられていないというのが普通なのが中学受験です。
だからこそ、もう一度やり直す期間をとるのが一般的な受験スケジュールです。
大事なのは、そういった一からやり直しをするときや追い込みの時期に、しっかりと取り組めるようになっていることではないしょうか。
個人的な経験則ではありますが、保護者の方にフォローされながらなんとか宿題に取り組んできた子よりは、紆余曲折を経てしっかりとした学習習慣を身につけてくれた子のほうが、最後の追い込みで一気に伸びます。
特に中学受験では、最後の1カ月で大逆転を起こすことは珍しくありません。
そんな大逆転を起こす理由の1つが、主体的に取り組んでいるかどうかです。
フォローされながらなんとか取り組んできたような子は、最後までどこか本気になれていない子が多くいます。
本番1カ月を切ったような時期に、自習室に来てもどこか集中できていません。
声をかけてみると「親が行けって言うから」なんてことを言う子は珍しくないのです。
一方、宿題をやれずにいたような子だったとしても、勉強に取り組めるようになるとものすごいことになります。
まず、自分が頑張ると決めたことなので、モチベーションが違います。
一心不乱に取り組んでおり、こちらが逆に心配するような取り組みをしているくらいです。
そんな子たちの伸び方が違うのは、明らかでしょう。
宿題は学習内容を固めるためであると同時にやるべき時にしっかりと主体的にやる練習だと思ってください。
そう考えると、時間をかけてもいいと思えないでしょうか。
具体的にはどうすればいい? ~私のやり取り例~
実際にどうすればいいのかわからないという方もいると思いますので、最後に少しだけやり取りの例を紹介して終わりにしたいと思います。
想定:毎日コツコツやるのが苦手で宿題をためてしまい最後までできない子
誘導先:毎日、朝に起きて学校に行く前に取り組む
なんで、途中までしか宿題ができないのかな?
……
すぐに答えが出てこないようであれば少し助け舟を出してあげましょう。
ちなみに、悪いと思っている子ほどあまり声は出さずに頷きだけのほうが多いです。
そっか……まあ、遊ばないのはムリだよね。
でも宿題を終わらせるのが大事なのはわかるでしょ?
どうすればいいと思う?
遊びよりも宿題が大事になるような方法か、遊ぶ時間を減らさないで宿題をできる方法を考えないと。
改善策が先ほどの原因とつながっていない場合は、「さっきの原因の改善策になっていない」ということをやんわりと伝えてあげましょう。また、出てこないようであればここでも助け舟を出してあげましょう。
火曜日と水曜日だったら遊びから帰ってきてからもできると思う。
そっか!じゃあ、火曜日と水曜日にも少しだけ時間をとってやってみよう!
一気にためてやっている→何日かに分割してやるに誘導
~ 後日 ~
様子を見たいのであまりすぐにやりなおしをする必要はありません。
ただ、改善しきれていないままもよくないので、3週間~1か月を目安に考え直すようにしましょう。
宿題が終わっていないけどどうかな?
前に言ってた火曜日と水曜日にやる時間はとれてる?
でもそれでも終わってないから別の方法も考えなきゃだね。
どうすればいいかな?
少しでもよくなっていたり、改善策を実行できていたらしっかり褒めてあげましょう。
……
でも毎日やるのが必要だとは思うんだよね?
想定している目標だったとしても、大変な内容には共感してあげると良いです。
じゃあ、まずは毎日やることを目標にやってみようか。
何日かに分ける→毎日やるに誘導
~ 後日 ~
じゃあ、前みたいに何日かに分けてやるというほうがいいのかな?
じゃあ、毎日やるためにいつなら時間をとれるか考えてみようか。
学校から帰ってきてからはできそう?それとも遊びたいかな?
遊びから帰ってきてからは何しているのかな?
宿題が終わってないときだけ、ぎりぎりまで起きてる。
朝起きてからはどうかな?何時に起きてるの?
毎日やる→朝に毎日やるに誘導!
どうだったでしょうか。
最後の誘導はかなり物わかりの良い子でしたね(笑)
例ということで許してください。
ただ、そんなものわかりのいい子でもこれだけ時間がかかると考えてもらうと良いかもしれません。
ちなみに3回で誘導したので、2~3カ月くらいかかることになります。
さらにいえば、朝だけでは時間がたりなかったから他の時間も確保しなくていけないとか、朝の何時に起きて何時までやるなど具体的に時間を決める必要があるかもしれません。
ただ、こうして変えていくことでしっかりとした学習習慣を身につけることができれば、中学受験はもちろん、その後の生活にも大きな力となるはずです。
最後に
今まで書いてきましたが、これは私の考えであり一例にすぎません。
子どもの時期によっては、こんな悠長なことは言ってられないという子もいるでしょう。
子どもによっては、そもそもこの考えがあてはまらない子もいるかもしれません。
また、今後私の考えが変わっていくことも十分にあります。
もしかしたら無理矢理でも宿題はやらせることに考えがシフトしているかもしれません(おそらくないとは思いますが)。
その他にも、受験環境や勉強環境が変わることで別の方法が良くなる可能性だってあります。
そこで、大事なのは相談できる人を作っておくのが一番だと思います。
一番考えられるのは、塾の先生でしょう。
困ったことがあったらまずは、電話でもいいので相談してみることをお勧めします。
何かよいアドバイスがもらえるはずです。
※ちなみに、こういった相談をさせてもらえないような塾であれば、
すぐにでも転塾することをオススメします。
そういった相談も含めて、塾の価値があると思います。
1人で抱え込まないでください。関わる大人全員で協力して子育てができると良いですね。