【中学受験】親の関わり方 ~宿題編~

デン:親の関わり方1

1ページでは、子どものスケジュールと子どもにとっての宿題について書いてきました。
ここからは、本題である大人ができる宿題への関わり方について書いていこうと思います。

このページは2ページ目です。まだ、1ページ目を見ていない方は、ぜひ1ページ目からお読みください。
1ページ:中学受験の生活と子どもにとっての宿題
2ページ:宿題を「やるべきもの」にする大人の関わり方
3ページ:実際に宿題をやらせるために大人ができること

大人ができること

宿題について、先生や保護者の方など周りの大人ができることは、

①「宿題はやるべきもの」という価値観を身につけさせること
②そのうえで、どうすればできるようになるのか考えていくこと

2つではないでしょうか。
もちろん、この2つ以外にもできることはたくさんあります。
しかし、この2つが特に大事であり、どんな子にとっても必要なことではないかと思うのです。

宿題は何のためにする?

まず、宿題は何のためにするべきなのでしょうか。

いくつか考えられるかと思いますが、「学力向上」を目的と考えたとき、習ったことを自分のものにするためと考えることができます。
授業で習っただけでできるようになる天才はほとんどいません(たまにそういう子もいますが)。
授業で習ったことを使ってみて、何回も何回も練習することで初めて自分のものになるのです。

中学生や高校生であれば、こういったことは理解しています。
もっと言えば、「学力向上のために宿題をするのは当たり前だ」自覚し、自ら勉強を進めていくべきだと考えています。
義務教育を終える彼らは、受験をするかどうかを自身で選択することになるのですから。

しかし、中学受験はしなくてもよい受験です。
では、なぜ中学受験をするのか。
理由は様々ですが、本当に自分の心の中から「受験をしたい」と思っている子は少数だと思っています。
・周りの友達が受験するから
・親が中学受験をすることに決めたから
・親の期待に応えたいから
このような理由ではじめる子が多いのです。
そんな子たち「自分のために」「できるようにするために」なんて考えるのは難しいのではないでしょうか。

宿題はやるべきもの? ~ご褒美とペナルティー~

そんな子たちが、「宿題はやるべきもの」と思えるでしょうか。
「宿題はやるべき」という価値観は、ぜひ身につけてほしい価値観ですが、身につけている子はそれほど多くないのが現状なのです。
それまでの小学校生活で身につけることができるのではないかと思うかもしれません。
しかし、宿題をやったことで得られる「ご褒美」宿題をやらなかったことで課される「ペナルティー」が身につけられない要因になってしまっているのです。

我が家ではご褒美なんてあげたことないという方もいるかもしれません。
ですが、子どもにとっては意外なものがご褒美になっているのを知っておいてほしいと思います。

それが「周りの大人の褒め言葉」です。

小学4~5年生などになると、宿題をやっても褒めるなんてことはあまりないと思います。
ですが、低学年の頃ならばどうでしょう。
例えば1年生の子が「宿題が終わった!」なんて報告をしてくれたら「よく頑張ったね!」などと褒めてあげたりしてませんでしたか?

周りの大人、特にお父さんお母さんの褒め言葉を子どもは想像以上に嬉しく感じます
ですが、時が経つにつれ褒め言葉は少なくなっていきます。
そして、ご褒美はなくなったとき、やらないことに対してペナルティーがでてきます。

ペナルティーなんてだしことないと考えた方は、少し振り返ってみてください。
「宿題をやるまで遊びにいくのは禁止!!」などといったことはありませんか?
あまり重く感じていないかもしれませんが、これは子どもにとってはかなりのペナルティーです。
ほとんどの小学生にとって、コミュニティーの範囲は学校と習い事でしょう。
しかも、自分の家から近い範囲でしか習い事をしていないような子であれば、学校と習い事でコミュニティーに大きな差はありません。
そんな子どもにとって、「友だちと遊べない」は人間関係のほぼ全てを制限されているような状態です。
かなり重いペナルティーといえるでしょう。

たとえ、順調に宿題をやっている子であっても、宿題をやるべきものとして捉えておらず、ご褒美をもらうため、ペナルティーを受けないために宿題をする、というようになってしまっています。
そのため「宿題はやるべき」と感じている子が少なくなってしまっているのです。

ただ一つ付け加えておきたいのは、「ご褒美やペナルティーがいけないことではない」ということです。
むしろ、この2つをうまく使うことでこの価値観を身につけることができます。
もう少し詳しく見ていこうと思います。

やるべきものにするご褒美

まずご褒美についてですが、何か物を買ったりするのはオススメしません。
これが日常化すると何かを「もらうため」に宿題をするようになり、価値観を身につけるということから離れていきます。

ご褒美は、低学年までの頃と同じように褒めてあげるだけで十分「ご褒美」になります。

大事なことは
①「ちゃんと宿題をやって、偉いね!」のように、理由をつけて褒めてあげること
②「当たり前のこと」と伝えないこと
③身につくまで続けること
の3つです。

何を褒められているのかをしっかりと伝えてあげることが大事です。
何をしたら褒められるのかがわかれば、褒めてもらうためにその行動をとれるようになります。

「当たり前」ということが伝わると「別に褒められることではない」と子どもが感じることになります。
想像以上に敏感な子どもは、それがわかった途端「やらせるために褒めているだけだな」と感じることになります。
こうなっては、褒めることの意味がありませんね。

褒めてもらうために頑張る→褒めてもらった→また褒めてもらうために頑張る
こういったループをつくりあげ、続けていきましょう。
この繰り返しが「宿題はやるのが当たり前」という習慣になり、習慣を繰り返すことで「宿題はやるべきもの」という価値観を身につけることができます。

やるべきものにするペナルティー

ペナルティーと書いていますが、罰を与えるという意味ではありません。

宿題に関してのペナルティーとは、単純に「終わらなかったもの」「できなかったもの」をしっかりと終わらせる、やらせるということだけです。
ここについては、いつやるかなどを子どもに決めさせ、守らせます。
遅すぎるなど、出てきたものに納得出来ないようであれば、理由を聞いてみてください。

私は宿題ができていなかったときは居残りや塾がない日に呼び出したりすることもありました。
すると、「塾がない日に来たくない」や「居残りはしたくない」と言う子がいました。
また、「遊べないからイヤだ」というような子もいます(こういった子は、意外に多いです)。
そういった理由については、共感はしつつも「あなたができなかったのだから、そこは我慢しなくてはいけない」と言ってしっかり守ってもらいました(もちろん、ご家庭の用事などどうしてもできないときは別です)。

簡単に言ってしまえば、イヤなことの強制です。これがペナルティーです。
ただ、今回やらなかったもののみに、ペナルティーを与えています。
また、「今回の宿題が終わらなかったから」ということも伝えてあげましょう。
自分が今イヤな思いをしていることは自分のせいなのだと感じさせるのです。
それが「イヤな思いをしないためには……」ということにつながり、「やるべきもの」という価値観につながっていきます。

なお、ペナルティーが終了したら、労うことは忘れずにしてあげてください
「お疲れ様」、「頑張ったね」というような声かけをして、プラスの気持ち、プラスの声かけで終えるようにしましょう。

間違えても「忘れなければ大丈夫だった」というような嫌味を伝えないでください。

褒めることは本当に意味があるのか

褒めることは本当によいのかと思う方もいるかもしれません。
そこで、私が担当していた子の話を紹介しましょう。

長い間、宿題をやれていなかった子がいました。たまにやってくることもあり、私も褒めていたのですが、習慣化されることはなくやらないときのほうが多いという状態でした。
お母さんも悩んでいたようで、よく相談をされていたのを覚えています。
まず「やったときはしっかり褒めてあげてほしい」と伝えても、あまり自分から塾のことなどは話さないようで褒めるタイミングがわからないということでした。

そんな話を聞いてから、初めて宿題をやってきた日がありました。
授業終了後、電話でお母さんに宿題をやってきたことを報告し、「やってきたことを褒めてあげてください」と伝え、その電話は終わりました。

次の授業のことです。嬉しそうな表情を浮かべて塾にきました。
宿題はしっかりと終わっており、連続で終わっていたのは初めてなのでいつも以上に褒めたのを覚えています。すると「お母さんも宿題をやったことを褒めてくれたんだぁ」と嬉しそうに報告してくれました。
お母さんが一度褒めただけで「次回も頑張ろう」と思えたのでしょう。

「今まで自分も褒めていたんだけどなぁ……」と少し悲しい気持ちにもなりましたが、「お母さんやお父さんの一言には勝てない」と改めて感じました。

ちなみにこの子は、この1件から宿題をしてくるようになり、しっかりと学力を身につけてくれました。


どうでしょうか。
まずは、騙されたとされたと思って褒めてあげてください。
お金がかかるものでも、時間がかかるものでもありません。
少しだけ試してもらえると良いと思います。

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