合同条件(相似条件)の言い方は一字一句、教科書と同じ必要があるのか。

  • 2022年4月30日
  • 2023年8月24日
  • 小話
合同条件や相似条件は教科書と一字一句同じである必要があるか

中学生を教えていると,ほぼ毎年こんな質問が来ます。

「合同条件(相似条件)は,一言一句教科書通りに書かなければいけないのか」

以下の条件ですね。

三角形の合同条件
(ⅰ) 3組の辺がそれぞれ等しい
(ⅱ) 2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい
(ⅲ) 1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい
三角形の相似条件
(ⅰ) 3組の辺の比がそれぞれ等しい
(ⅱ) 2組の辺の比とその間の角が等しい
(ⅲ) 2組の角がそれぞれ等しい
結論です。
数学的にはこの通りに書く必要性はないのですが,
不正解にならないために一字一句この通りに書きましょう!
厳密には,合同条件や相似条件は教科書と一言一句同じである必要はありません。
ただ,教科書通りに書くことをオススメしています。
理由としては,以下の2点です。
・合同条件を書き換えることで、別の意味になってしまう/別の意味を含んでしまう場合がある。
・先生が一字一句教科書通りでないと×にすることがある。

書き換えに注意

数学における証明の絶対的な条件として「間違った解釈をされないように書く」というものがあります。

言い方を変えると,「間違った解釈をされるかもしれない書き方」は不正解になる可能性があるということです。

例えば、合同条件(ⅲ)の「1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい。」を以下のように表現したとします。

・1組の辺とその両端の角がどちらも等しい。

まず,今回示したい合同条件は示したいのは以下のようなものです。

この状況を正しい内容で書くことができれば問題ありません。

この場合の正しい内容とは,間違った解釈をされないように書くということです。。

改めて先ほどの内容を見てみましょう。

・1組の辺とその両端の角がどちらも等しい。
この書き方だと,2通りの解釈をすることができてしまいます。


この解釈であれば,合同といえる。
一辺とその両端の角がどちらも等しい
この解釈の場合,合同といえない。

大多数の人は①の解釈をするとは思いますが,②の解釈を否定することはできません。

日本語的には間違った解釈ではないのですから。

このように,別の解釈釈を生んでしまう言い回しは証明では決して使ってはいけません。

よって,合同条件は教科書通りに書くのが安全なわけです。

もう1つの理由は,ある意味で悲しいことですが「教科書通りに書かないととりあえず×にする」という採点基準の方が一定数いらっしゃるからです。

過去に,「1組の辺とその両端の角がどちらも等しい」を以下のように書いてきた生徒がいます。

・一辺両端角相等のため
・1組の辺とその両端の角がおのおのも等しいため

数学的には間違っていないのですが,残念ながらどちらも不正解になってしまいました。

一辺両端角相等なんて昔の教科書に普通に使われていて,意味も問題ないんですがね……。
(なぜ生徒がこの言い回しを知っていたのかは謎です)

不正解になった理由を聞いたところ,案の定「合同条件じゃないから」とのこと。

教科書に書かれている合同条件は,合同になる条件を分かりやすいように簡潔に書てくれただけなので,
この通りじゃなくても良いのですが……採点基準は人それぞれなんですね。

個人的には,正しい内容であれば不正解や減点にする必要はないと思いますが……。

蛇足

何年か前に直保体の体積を「縦×横×高さ」と教えたので「高さ×横×縦」で
計算したものを不正解にしたという事例がテレビ番組で取り上げられました(初耳学だったかな?)。

数学者としては抗議レベルのものだと思いますが,教育者としては背景が知りたい所です。

例えば,事前に「授業をしっかりと聞いているかの確認するから,この通りに書くこと」という指導があったとしましょう。

(計算順序でやるのは無理があるだろ! いう突っ込みは置いておくとして)
このような状態であれば,「答えがあっているか」と「指示を守れているか」という2点が採点基準になるので,まぁ分からなくもないかなという感じです。

学校のテストの場合,稀ではありますがこの「指示が守れているか」ということが採点基準になることがあるので,注意が必要ですね。