本記事では,平方完成の解き方をパターン別に記していきます。
高校数学を解く上で非常に大事な式変形なので,必ずマスターしましょう。
そもそも平方完成とは
平方完成とは2乗で表される式を作ることです。
具体的には,\((x+y)^2\)や\((x+2)^2\),\((a+2)^2\)といった形を作るときに用いられます。
2次関数の頂点を求めるための式変形で,高校数学のあらゆる単元で必要になります。
平方完成は大きく5つのパターンに分けることができます。
①\(x^2の係数が1でxの係数が偶数。\)
②\(x^2の係数が1でxの係数が奇数。\)
③\(x^2の係数が1以外の整数。\)
④\(x^2の係数が分数。\)
⑤\(x^2の係数が文字。\)
また,この5パターンは全て以下の手順で解くことが可能です。
(ⅰ)\(x^2の係数で定数項以外をくくる。\)
(ⅱ)\(xの係数の半分の二乗を足して引く。\)
(ⅲ)\(因数分解&分配法則をする。\)
(ⅳ)定数項を計算する。
これだけだとさっぱりだと思うので,1つ1つの手順を確認しながら解いていきましょう。
①\(x^2の係数が1でxの係数が偶数\)
\(x^2の係数が1でxの係数が偶数\)の式変形を例題形式で解いてみます。
先ほどお伝えした(ⅰ)~(ⅳ)の手順に則って解いていきましょう。
(パターン別に2種類)
\(x^2+4x\)を平方完成しなさい。
まとめると,以下のような式変形になります。
\(x^2+4x\)
\(=x^2+4x+2^2-2^2\)
\(=(x+2)^2-4\)
\(x^2+8x-5\)を平方完成しなさい。
先ほどのパターンと違うのは,-5という定数項があるということです。
平方完成では,定数項は最後に計算します。
まとめると,以下のような式変形になります。
\(x^2+8x-5\)
\(=x^2+8x+4^2-4^2-5\)
\(=(x+4)^2-16-5\)
\(=(x+4)^2-21\)
平方完成の問題の中では最も簡単なパターンです。
まずはこのパターンを繰り返し演習し,平方完成の式変形のイメージをつけましょう。
②\(x^2の係数が1でxの係数が奇数\)
続いては,\(xの係数が奇数\)というパターンです。
やることは先ほどのパターンと全く一緒なのですが,分数が登場するので最初は解きにくい問題です。
(ⅰ)~(ⅳ)の手順に則って解いていきましょう。
\(x^2+5x\)を平方完成しなさい。
注意すべきことは,\(5の半分は\)\(\displaystyle \frac{5}{2}\)だということ。
これさえ分かっていれば,今までと同じように解くことができます。
まとめると,以下のような式変形になります。
\(x^2+5x\)
\(=x^2+5x+\)\(\left(\frac{5}{2}\right)^2-\)\(\left(\frac{5}{2}\right)^2\)
\(=\left(x+\frac{5}{2}\right)^2\)\(-\frac{25}{4}\)
\(x^2+7x-3\)を平方完成しなさい。
先ほどとの違いは,定数項の\(-3\)があるという点ですね。
定数項は最後に計算します。
まとめると,以下のような式変形になります。
\(x^2+7x-3\)
\(=x^2+7x+\)\(\left(\frac{7}{2}\right)^2-\)\(\left(\frac{7}{2}\right)^2-3\)
\(=\left(x+\frac{7}{2}\right)^2\)\(-\frac{49}{4}-3\)
\(=\left(x+\frac{7}{2}\right)^2\)\(-\frac{61}{4}\)
③\(x^2の係数が1以外の整数\)
次は,\(x^2の係数が1以外の整数のパターンです。\)
このパターンのポイントは定数項以外をくくるということです。
(ⅰ)~(ⅳ)の手順に則りながら,解いていきましょう。
\(2x^2+12x\)を平方完成しなさい。
\(x^2\)の前に係数があるので,くくることから始めます。
まとめると,以下のような式変形になります。
\(2x^2+12x\)
\(=2(x^2+6x+3^2-3^2)\)
\(=2(x^2+6x+3^2-9)\)
\(=2(x^2+3)^2-18\)
\(3x^2+10x\)を平方完成しなさい。
先ほどと違うのは,\(x^2\)の係数である3でくくると,\(x\)の係数が分数になるという点です。
ただ,半分の2乗を足して引くというルールに変更はありません。
(ⅰ)から(ⅳ)の手順を1つずつ行えば大丈夫です。
まとめると,以下のような式変形になります。
\(3x^2+10x\)
\(=3(x^2+\)\(\frac{10}{3}x+\)\(\left(\frac{5}{3}\right)^2-\)\(\left(\frac{5}{3}\right)^2)\)
\(=3(x^2+\)\(\frac{5}{3}x)^2-\)\(\frac{25}{3}\)
\(-x^2+10x\)を平方完成しなさい。
今回は,\(x^2\)の係数にマイナスがついていますね。
この場合は,マイナスでくくればあとは同じです!
まとめると,以下のような式変形になります。
\(-x^2+10x\)
\(=-(x^2-10x+5^2-5^2)\)
\(=-(x^2-10x+5^2-25)\)
\(=-(x-5)^2+25\)
\(2x^2+12x+25\)を平方完成しなさい。
定数項が表れたパターンですね。
もう慣れてきたでしょうか。定数項は最後に計算します。
まとめると,以下のような式変形になります。
\(2x^2+12x+25\)
\(=2(x^2+6x+3^2-3^2)+25\)
\(=2(x^2+6x+3^2-9)+25\)
\(=2(x+3)^2-18+25\)
\(=2(x+3)^2+7\)
④\(x^2の係数が分数\)
次は,\(x^2の係数が分数のパターンです。\)
このパターンが苦手な人も多いですが,その理由は分数でくくることができないからです。
中学校ではあまり見ない式変形ですが,高校に入ると「これくらいできるよね?」という前提で話が進んでしまうことが多いため,このパターンを苦手な人が増えてしまいます。
よって,まずは分数のくくり方をみていきましょう。
分数のくくり方。
分数でくくる場合には,くくった数にその数の逆数をかけます。
例題形式で3問見ていきましょう。
①\(\frac{1}{2}x^2+4x\)を\(\frac{1}{2}\)でくくりなさい。
②\(\frac{4}{3}x^2+4x\)を\(\frac{4}{3}\)でくくりなさい。
③\(\frac{6}{5}x^2+4x\)を\(\frac{6}{5}\)でくくりなさい。
分数のくくり方さえマスターしてしまえば,今までの平方完成と何も変化ありません。
\(\frac{1}{2}x^2+4x+7\)を平方完成しなさい。
まとめると,以下のような式変形になります。
\(\frac{1}{2}x^2+4x+7\)
\(=\frac{1}{2}(x^2+8x+4^2-4^2)+7\)
\(=\frac{1}{2}(x^2+8x+4^2-16)+7\)
\(=\frac{1}{2}(x+4)^2-8+7\)
\(=\frac{1}{2}(x+4)^2-1\)
⑤\(x^2の係数が文字\)
\(ax^2+bx+c\)を平方完成しなさい。
このパターンができれば,すべての平方完成ができると言っていいでしょう。
文字が多く混乱しがちですが,手順に則れば怖くありません!
\(ax^2+bx+c\)を平方完成しなさい。
まとめると,以下のような式変形になります。
\(ax^2+bx+c\)
\(=a(x^2+\)\(\frac{b}{a}x+\)\(\left(\frac{b}{2a}\right)^2-\)\(\left(\frac{b}{2a}\right)^2)+c\)
\(=a(x^2+\)\(\frac{b}{a}x+\)\(\left(\frac{b}{2a}\right)^2-\)\(\frac{b^2}{4a})+c\)
\(=a(x+\)\(\frac{b}{2a})^2-\)\(\frac{b^2}{4a}+c\)
最後に
本記事では,一番最初に学習する人に向けて式変形を1つ1つ記載しました。
慣れてきたら,ある程度途中式を省略して早く解く練習もいいかもしれませんね。