化学や物理など,理科系科目は必ず有効数字が存在します。
高校生からは「有効数字を合わせないと正解にならない」
という学校も増えてくるので,頭を悩ませている人も多いのではないでしょうか。
ここでは,有効数字について解説していきます。
有効数字を一言でいうと?
有効数字とは,正確な値を知ることができない場合に用いる値であり,
「誤差を含んでいるものの,正確な値に近い値」
のことを,有効数字と言います。
とはいえ,これだけでは意味不明だと思うので,
具体例を用いて考えていきます。
有効数字とは何か
下の図のような青いテープの長さを,定規で計測すると仮定します。
8.0㎝と8.1㎝の間になってしまったので,
この定規では正確な長さを測定することができません。
正確に測ろうとしても,どうしても誤差が出てしまいます。
日常生活でなら「まぁ,だいたい8㎝くらいだろう」で
済むことですが,理科ではそうはいきません。
理科では物質を集める量が非常に多いので,1つ1つは
小さな誤差でも,計算を重ねると大きな差になってしまうからです。
例えば,このテープを1億本集めた時の長さを計算してみましょう。
この時,1本のテープの長さは何㎝で計算するべきでしょうか。
①定規の小さいメモリに合わせ,8.0㎝として計算する。
②定規の大きいメモリに合わせ,8.1㎝として計算する。
③8.0㎝と8.1㎝の真ん中くらいに見えるので,8.05㎝として計算する。
8.0㎝ × 1億 = 8憶㎝ = 800万メートルになります。
しかし,テープ1本の長さは8.0㎝よりも長いので,正確な値とは言えません。
8.1㎝ × 1億 = 8憶1000万㎝ = 8万1000メートルになります。
しかし,テープ1本の長さは8.1㎝よりも短いので,正確な値とは言えません。
8.05㎝ × 1億 = 8憶500万㎝ = 8万500メートルになります。
しかし,8.05㎝という数値は,目測で決めた長さなので,正確な値とは言えません。
①②③のいずれも正確な値を計算することはできませんでした。
もう一度,定規を確認してみましょう。
もちろん,目測なので正しい値とは言えません。
今回の例では、8.05㎝として計算するのが、正しいとされています。
「意味のある値」とは
次は,有効数字で良く出てくる「意味のある値」とは
何かということと,測定器具の読み取り方を見ていきましょう。
先ほどの8.05㎝の数字の意味は以下のようになります。
青いマーカーの部分の数字は,測定器具(今回は定規)で
明確に判明している数字です。
このように,実験器具から読み取れる数字を「信用できる値」といいます。
次に,赤いマーカーの部分の数字です。
この数字は,定規からは正確に読み取れない部分を
目測で判断した数字です。
目測なので誤差はあるものの,8.0㎝や8.1㎝よりは正確な値に近いです。
このような値を「ほぼ信用できる値」といいます。
この「信用できる値」と「ほぼ信用できる値」のことを
「意味のある値」と言い,測定結果の数値として計算に使用されます。
さらに具体的に言うと,理科の実験では,
「測定できる値の,\( \frac{1}{10}\)までを読み取った値」
を意味のある値として扱います。
用意した定規は1㎜まで測定できるので,
0.1㎜単位まで読み取った値が「意味のある値」ということになります。
有効数字の桁数の読み取り方
読み取り方のルールは単純です。
①数字を左から確認をして,
②初めて0以外の数字が出てきたところから,
③数字が何桁あるかを数える。
※\( 10^n \)という部分は,有効数字の桁数の読み取りには無関係。
試しに、0.15,200,0.0504,5.4×10³,という4つの数について,
①②③の順に確認し,有効数字の桁数を読み取ってみましょう。
青いマーカー部分は2桁なので,
0.15は有効数字2桁と分かります。
青いマーカー部分は3桁なので,
200は有効数字3桁と分かります。
青いマーカー部分は3桁なので,
0.0504は有効数字3桁と分かります。
青いマーカー部分は2桁なので,
5.4×10³は有効数字2桁と分かります。
「次の数値は有効数字何桁の表記か書きなさい」
という問題がよく出てきます。
20 3.0 0.15 0.035
0.0056 5.3×10³
100 2.35 0.351 0.0527
0.00535 6.20×10⁴
2134 2.254 0.1570 0.03509
0.002548 2.654×10²³
有効数字の表し方(書き方)
書き方(表し方)のルールも単純です。
①手元にある数字の有効数字の桁数を確認し,
②答えるべき有効数字+1桁を四捨五入し,
③〇、△×10\( ^n\)の形に変形する。
※数字の桁数が3桁以下の場合,③の形にせずにそのまま書くことも多い。
試しに、0.010302,0.1568,0.00005092,7.412という4つの数について,
①②の順に確認し,有効数字2桁で表してみましょう。
ここまで書きましたが、この有効数字の書き方は,
大学受験が終わったら忘れてください。
というのも,大学以降では専門的な有効数字計算をすることがあります。
「四捨五入」ではなく「五捨五入」という考え方を使うこともあり,
今回紹介した方法とは全く違った考え方をすることも多いです。
大学に入ったら「どのような有効数字の表し方をするのか」
ということを必ず確認しましょう。
ちなみに,筆者の大学では四捨五入を使う科目と
五捨五入を使う科目が入り乱れていました。
2.0×10\( ^n\)みたいな書き方をするのはなぜ?
このような書き方をすることで,
有効数字の桁数を明確にすることができるからです。
例えば,0.00002301と表記するよりも,
2.301×10\( ^{-5}\)と表記すると,
有効数字が4桁だとすぐに読み取ることができます。
このような書き方を明示的記法や科学的記法といいます。
さいごに
有効数字の意味や読み取り方を解説しましたが,
いかがだったでしょうか。
一度慣れてしまえば速くできるようになるので,
是非練習してみてください。